2025.07.02
⁻『公共交通機関の優先座席について(800字・時間60分)』
日々、多くの人が利用する電車やバスなどの公共交通機関。なかでも「優先座席」は、高齢者や妊婦、障がいのある人、体調の悪い人などが安心して座れるように設けられた特別な席です。
しかし、日常の中でその席をめぐって戸惑いや迷いを感じた経験がある人も少なくないのではないでしょうか。「譲るべきなのか」「見た目だけでは判断できない」「声をかける勇気が出ない」――そんな葛藤の裏には、日本社会の礼儀や気遣い、マナーといった文化が複雑に絡んでいます。
本記事では、優先座席の設置状況や利用実態、実際に席を譲る人の割合、海外の制度との違い、さらには「すべての席を優先席にする」という新しい取り組みについても紹介しながら、今あらためて「優先座席のあり方」について一緒に考えてみたいと思います。
●優先座席の現状と実態 |
日本の公共交通機関では、ほとんどすべての車両に「優先席」が設置されています。国土交通省によると、鉄道・地下鉄・バスを含めた公共交通の約97%以上に優先座席が設置されており、座席の端や車両の隅などに配置されるのが一般的です。
しかし、「実際に必要な人が座れているか」というと、課題も残ります。たとえば、ある交通機関の調査では、優先席に座っていた人のうち「必要とする人を見かけたが声をかけなかった」と答えた人が25%に上っています。譲ろうとする意思はあっても、声をかける勇気が出なかったり、「自分が譲っても他の人が座らなければ意味がない」と考えたりする人が多いのが現実です。
●あなたは席を譲りますか?アンケートから読み取る意識 |
内閣府が実施したある調査では、「優先席で必要そうな人がいたら席を譲る」と答えた人は全体の約74%、「ときどき譲る」が14%、合わせて約9割が譲る意思を持っていることが分かりました。ただし、年代によって差があり、60代以上では90%以上が「進んで譲る」と回答した一方、20代では「譲ったことがない」が25%と最も多くなっています。
その背景には、声のかけ方への不安や、「本当に譲るべき人かどうか判断できない」という戸惑いもあるようです。実際、見た目では分からない疾患や障害、妊娠初期など、外見に出ない配慮が必要なケースも多く存在します。
●海外と日本の優先座席制度の違い |
海外でも優先席は一般的ですが、日本との違いも見られます。たとえばイギリスでは「Priority Seat(優先席)」の前にピクトグラムや文字が明確に表示されており、譲らない場合は周囲から非難の目が向けられることもあります。
また、韓国では妊婦専用のピンクシートが導入されており、座席の頭上にランプが点灯するシステムが好評を得ています。台湾でも同様の仕組みがありますが、近年は「必要ない人が占有している」という批判が増えたことで、優先席を廃止または全席優先席とする動きが出てきました。日本でも一時期、神奈川県の相模鉄道が「全席優先席」の取り組みを行って話題になりました。
●出題者の意図 |
このテーマを通して試験官が知りたいのは、受験生が「社会的な課題を自分ごととして捉えているか」「多様な立場に共感できるか」「医療者としての感性を持ち合わせているか」という点です。
単に「譲るべき」と結論づけるのではなく、実際にどう行動するか、何に配慮するか、自分がどんな看護職になりたいかまで結びつけて書けると、深みのある文章になります。
●どう書くか |
構成としては、〈導入〉優先席に対する疑問や経験、〈展開〉現状や統計データ、〈比較〉海外との違い、〈意見〉自分の考えと医療者としての視点、〈結論〉今後どうあるべきか、という流れが効果的です。
自分が実際に優先席で譲った経験、または譲れなかった場面などを挿入すると、より説得力が出ます。
●まとめ |
優先座席という制度は、社会のやさしさや気遣いのバロメーターとも言える存在です。座るか譲るかという行為の背後には、多くの人の気持ちや事情があります。
大切なのは「譲ること」だけでなく、「思いやること」。看護を志すあなたがこのテーマにどう向き合うかは、これからの学びにも大きく影響するはずです。
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