2025.07.01
⁻『私の表現力(800字・時間50分)』
看護大学・看護学校の入試では、「表現力」を問う問題がしばしば出題されます。「表現力」と聞くと、絵がうまい、音楽に秀でている、文章が巧みであるといった芸術的な分野を思い浮かべるかもしれません。しかし、このお題が意味しているのは、それだけではありません。自分の考えをきちんと相手に伝える力、相手の立場を考えて発言する力、言葉以外の身振りや行動による伝達力――こうした力も「表現力」に含まれます。医療の現場では、患者さんとのやり取りやチーム内の報連相において、表現力はきわめて重要です。
本記事では、表現力とは何か、どのように表現力が看護に活かされるか、そして受験時にどうこのテーマに向き合えばよいかを考えていきましょう。
●表現力とは |
表現力とは、自分の考えや気持ちを相手に「わかりやすく」「的確に」「誠実に」伝える力を指します。言葉での表現はもちろん、表情、声のトーン、ジェスチャー、図解、文章など、さまざまな手段があります。
看護職を目指す人にとって大切なのは、「自分の思いを伝えることが目的」ではなく、「相手に伝わるように工夫すること」が目的であるという意識です。
表現力は一方通行ではなく、相手との関係性のなかで育まれるコミュニケーション能力の一部でもあります。
●豊かな表現 |
「表現が豊かだ」と言われる人は、語彙が多いだけではなく、相手の反応に合わせて言葉を選び変える柔軟さや、心を込めた発言ができる人です。
豊かな表現は、相手に安心感や信頼感を与えます。たとえば、「大丈夫ですよ」と言うとき、表情が不安そうで声が小さければ、かえって相手を不安にさせてしまいます。反対に、はっきりした口調とやさしい笑顔で同じ言葉を伝えれば、安心してもらえるかもしれません。表現力とは「技術」だけでなく、「人間性」もにじむ総合的な力です。
●医療職と表現力とは何の関係があるの? |
医療現場では、患者さんに安心を与える「声かけ」や、医療チーム内での円滑な連携など、あらゆる場面で表現力が問われます。とくに看護職は、患者さんの不安や痛みに寄り添い、的確に状況を把握して医師や多職種に伝える「橋渡し役」でもあります。声のかけ方ひとつで、患者さんの気持ちが和らぐこともあれば、不安を強めてしまうこともあります。また、相手の立場に立った伝え方や、言葉を選ぶ繊細さも求められます。
医療職において、表現力は思いやりや誠意のかたちでもあるのです。
●出題者の意図 |
このお題を通して、出題者が見ているのは「表現力」そのものだけでなく、「自分自身を客観的に見て語る力」です。表現力とは何かを理解し、それが自分の中にどのように備わっているか、どんな場面で発揮されたかを具体的に述べることが期待されます。たとえば、「私は中学時代、演劇部で活動していました」といった経験があるなら、その経験を通じてどう表現力を磨いたのか、看護にどう活かせると考えているかを述べるとよいでしょう。
●どう書くか |
まずは「表現力とは何か」を明確に定義し、次に「自分がどのように表現力を身につけてきたか」を具体的な経験とともに紹介しましょう。その際、「自分が表現できた」ことにとどまらず、「相手にどう伝わったか」や「それが看護にどうつながるか」にまで触れると、内容に深みが出ます。
文章全体が論理的に展開され、相手に伝わるように丁寧に書かれていれば、それ自体が「表現力の証明」にもなります。
●まとめ |
「表現力」は、看護職を目指すうえで欠かせない力です。芸術的な特技や話し上手でなくても、自分の思いを誠実に、相手に伝わるように届けようとする姿勢こそが大切です。そして、表現力は一朝一夕に身につくものではありません。日々のコミュニケーションを通じて、少しずつ培っていくものです。
このテーマに取り組むことで、表現力の本質を見つめ直し、自分の経験を丁寧に振り返る機会になることを願っています。
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