2025.06.16
⁻『地域住民に提供される医療活動の現状と課題についてあなたの考えを書きなさい。(800字・60分)』
「地域に根ざした医療活動をどう持続・発展させていくか」は、保健師を目指す受験生にとって避けて通れないテーマです。特に近年では、人口減少・高齢化・災害・地域間格差など、複数の社会的課題が複雑に絡み合い、地域医療は新たな局面を迎えています。
この記事では、そうした背景を踏まえつつ、現状の整理と論点のヒントを提供します。
●医療活動の現状 |
現在、日本各地で地域医療が展開されており、住民の健康支援に欠かせないインフラとなっています。保健所・市町村保健センター・地域包括支援センターなどが中心となり、健康診査、予防接種、感染症対策、母子保健活動、高齢者支援などを行っています。さらに、在宅医療や訪問看護の推進により、病院外での医療活動も広がりを見せています。
しかしながら、都市部と地方部では医療サービスの密度や質に明らかな差があり、特に離島や山間部、過疎地域では「出産できる病院がない」「夜間救急が機能していない」「常勤医がいない」などの声があがっています。
●地域医療の課題とは |
課題の一つは「人手不足」です。特に医師・看護師・保健師などの専門職が不足しており、地方ほど深刻です。高齢化が進む中、医療の需要は増加の一途をたどっていますが、支える側が追いついていないのが現状です。地域医療を担う医療職が都市部に集中してしまう背景には、設備の充実度や教育・研修機会、働きやすさの格差もあります。
また、インフラの未整備も大きな問題です。たとえば、離島や被災地では、交通網が遮断された際に救急搬送が困難になります。出産可能な医療機関がない地域では、妊婦が出産予定日前に都市部へ「入院」して備えるケースもあります。これは心身の負担だけでなく、経済的な負担にもつながります。
●出題者の意図 |
このような課題を踏まえたうえで、「あなたならどう取り組むか」を問うのがこの問題の核心です。出題者は、知識の有無だけでなく、地域を支える立場としての主体性や視点を見ようとしています。たとえば、「訪問看護や地域支援体制の強化」「災害時医療のスムーズな連携」「ICTやオンライン診療の導入による格差是正」などの意見を、自分の言葉で表現できると良いでしょう。
また、制度を批判するだけではなく、自分が保健師としてどう関わるか、という視点も忘れないことが大切です。
●保健師としてできること |
保健師は、医療機関と地域住民をつなぐパイプ役です。地域の特性に応じて健康教育や生活習慣病予防の啓発活動、育児支援、高齢者の孤立予防などを行います。特に高齢者が多い地域では、介護予防と医療の連携が求められます。
さらに、災害時には被災者の避難生活や心身の健康ケアにも携わります。防災訓練の場面で顔の見える関係を築いておくことも、重要な活動の一環です。
また、都市部でも「地域とのつながりが薄い」「孤独を感じやすい」などの問題が浮かび上がっています。地域医療の課題は過疎地だけの問題ではなく、社会全体の縮図としてとらえるべきです。
●書きづらいと感じたら |
「地域の医療についてはあまり詳しくない」と感じた受験生もいるかもしれません。そんな時は、身近な例やニュースを思い出すのがヒントになります。たとえば、「高齢者がワクチン接種会場に行けない」「診療所が閉院して困っている」「地域の訪問看護が支えになっている」など、実体験や身近な声から出発して構いません。
また、全国的な政策(地域包括ケアシステムや在宅医療推進)に言及することで、文章に厚みが出ます。あくまで自分の視点を忘れず、「将来、保健師として何ができるか」を語りましょう。
●まとめ |
「地域医療の現状と課題」は、答え方によっては非常に個性的な文章になるお題です。特別な知識がなくても、身近な例や自分の志望動機をふまえて丁寧に構成するのがよいでしょう。
今後も超高齢社会が進む中で、地域における医療の役割はますます重要になります。自分自身がその一端を担うという意識を持ちつつ、具体的な施策や展望を交えて文章にできれば、面接や志望理由書との一貫性も生まれ、好印象につながるでしょう。
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